一人の男の人生がぐちゃぐちゃになってゆく様を見届けたい、
というスタンスでいるつもりではありましたが。
心のどこかでは、
「この人、私がいなくなったらどうなってしまうんだろう?」
みたいな気持ちもあったかと思います。
だって、早川の分身のようなクズ人間っぷりだったんだもの。
早川は常に彼氏がいる人生で。
その彼氏はもれなくどんな時でも早川のことを肯定してくれる味方で。
「仕事が嫌だ、辞めたい」って言えば、
無理することないと返してくれる相手で。
それが心を穏やかに保てる強い存在になっていました。
ケンちゃんは友達も少なく、早川以外の人と会っている様子もありませんでした。
そしてお金もないので、早川と会っている時間以外は本当に孤独だったと思います。
なまじクズ人間同士なだけに、そのつらさが分かってしまうというか。
しかし早川、新しい職場でまた新しい出会いに恵まれ、
「あ、普通の社会人のデートってこうだったわ。」
と、思い出しました。
大きな駅で待ち合わせして、
男がセッティングしてくれたレストランで美味しい食事をして、
男は早川に気に入られるようプレゼントなんか用意しちゃって。
時間かけてケンちゃんちに行ったところで、
家に引きこもって映画ダラダラみるデートも新鮮ではありましたが、
要は飽きた。
この一言に尽きます。
今までのデートにはない感じで新鮮だっただけで、
それが楽しいのかって言われると…
普通のスーパーで買った食材で作った素人の料理よりも、
フレンチのフルコースの方が美味しいに決まってるしね。
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